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『ダブル・インパクト 明治ニッポンの美』東京展が開催中です

東京藝術大学とボストン美術館のコレクションのみで構成された
日経ほか主催『ダブル・インパクト 明治ニッポンの美』の東京展が
4月4日(土)から東京藝術大学美術館(上野)で開催されています。

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開国以来、ウェスタン・インパクトを受けて激動の渦中にあった日本美術、
そして独自の進化を遂げていた日本文化を驚嘆をもって発見し、
収集した貴重な日本美術コレクションを合わせてご覧いただけます。

これまでも作品のキャプション(タイトル・作家名・年代・技法・所蔵などが書かれている小さなボード)に
個人蔵か、どこの美術館の所蔵品なのかは明記されていましたが、
本展は特にそこに着目するとより一層鑑賞が興味深いものになると思います。

特にボストン美術館の所蔵品は、これまで日本での鑑賞がなかなか難しかったものなどもあり
初めて見るような作品が多々展示されています。
珍品や本邦初公開のものもありますので、時間に余裕をもってお運びいただくことをおすすめいたします。

 

また、特にキャプションや音声ガイドでも語られていないようでしたが個人的にとても気になったのは、
第3章のヴィンチェンツォ・ラグーザによるブロンズ胸像≪日本大工≫と、
第4章の平櫛田中による木彫≪鶴氅試作≫です。

≪日本大工≫は、胸筋逞しい若衆の生生しい姿を表しています。
しかし神々しい大理石彫刻のような作られた均整美ではない、
あくまで日々の労働で鍛え上げられた、隆々とした肉体を呈しています。

ですが、特に生生しいのは背面に広く彫られた刺青です。
後ろまで回りこんでみると、浮世絵のタッチで若衆と女性、子供の姿が彫られていることが確認できました。
刺青入りのブロンズ彫刻とは、なかなかの珍品ではないでしょうか。

西洋にもタトゥーの文化がありますが、浮世絵がタトゥーになり、しかも背中に大きく入っていることは、
イタリア人彫刻家・ラグーザにとって大きなインパクトだったのでしょう。

≪日本大工≫はリアルな労働者としての姿としての作品でもあり、
また鮮やかな絵画のような浮世絵のタトゥーを美術として受け入れ、
残したいという衝動が成した作品なのかも知れません。

 

≪鶴氅試作≫は、平櫛田中による木彫で、人目で「岡倉天心だ」と分かる名作です。
作品がどれほど素晴らしいかというのは会場でご覧いただくとして、ぜひ注目していただきたいのは
台座部分の向かって右脇(天心先生を左から見る位置)です。

台座部分に「Asia is One」という言葉が太い調子でしっかりと彫られています。
この言葉は、岡倉天心がインドで著した『東洋の思想』における冒頭の一文として有名です。
この木彫が制作されたのは、岡倉天心の没後30年にあたるそうですが、
30年経ってなお、天心が残した言葉は平櫛田中に受け継がれ、
今日もこのような展示の度に、私たちに鑑賞者に訴えかけているように感じられました。

 

彫刻作品をご鑑賞の際には、ご自分の目線だけでなく、背伸びをしたり、屈んでみたり、
もちろん背後にも回っていただいて、色々な角度から見ていただくと、
正面からだけでは得られない新しい発見がありますので、試してみてくださいね。
(周りの方にご配慮いただきながら…)

 

他にも、有名な象牙彫刻≪人体骨格≫やドラマチックで大胆な演出の小林永濯≪菅原道真天拝山祈祷の図≫、
それまでの熊図や獅子図とは全く異なる写実的な≪熊図屏風≫や、
素晴らしいのにちょっと面白い柴田是真の≪野菜涅槃図蒔絵盆≫などもおすすめです。

柴田是真といえば≪千種之間天井綴織下図≫も下図ならではの肉筆感が伝わってきて、とても魅力的でした。
細部にわたる観察や色遣いは日本らしいものですが、写生ではなく、図案としてデザインされているため、
ウィリアム・モリスの作品のような意匠としての完成度の高さを感じることが出来ました。

 

本展は、明治期の日本美術界を外からの目線を通じて俯瞰することで、これまでとはまた異なる、新しい発見ができる展覧会です。急激なインプットとアウトプットを行った時期にしか起きうらない、明治期ゆえの熱量を感じることができますので、ぜひ会場で、その独特な時代背景をイメージしながら鑑賞してみてください。

 

ちなみに、藝大美術館の入り口前には教授陣の名札がかかっています。
遠い世界にいるような有名作家の名前が掛かっていると、なんだか不思議な気持ちになりますね。

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東京展は5月17日(日)までと、実はあと一ヶ月くらいしかありません。
どうぞお早めにお出掛けください。